私たちが行う手術の多くは、「再建手術」。腫瘍を切除するなどして損傷した部分へ、手術によって、組織を移植したり、血管をつなぎ直したりします。体の表面に関わる手術であるため、見た目の美しさが問われます。担当医自身だけでなく、患者さんも手術の良し悪しが分かる。そういった意味では、技量がすべてであり、とてもシビアな世界です。名大病院では、乳がん患者さんの乳房再建手術において、血管をつないで血液を循環させる「マイクロサージャリー」を年間約150例行っており、98%の成功率をあげることができています。
手術の多くは、他科の先生たちとチームを組んで行われます。頭頸部腫瘍であれば、耳鼻咽喉科、口腔外科、脳神経外科とともに取り組みます。若いうちから積極的に手術を経験して、口頭では教わることのできない、手技の感覚的な部分をつかんでいくことが、技量を上げる上では不可欠です。形成外科は、手術に関心があり、自分の力で手術への対応力を上げていく覚悟のある人たちにおすすめしたい分野ですね。
2001年、名古屋大学卒。刈谷豊田総合病院で1年間研修を行い、その後名古屋大学形成外科に入局した。2007年には、名古屋大学大学院医学系研究科を修了。博士号、形成外科専門医を取得した。現在は形成外科講師として後輩を育成しながら、主にマイクロサージャリーを用いた頭頸部再建手術や乳房再建手術を手掛けている。(2014年11月異動)
形成外科の魅力は、新しい手術法を開拓していく実感があることと、患者さんの社会復帰に貢献できること。そう笑顔で語る神戸未来先生は、実はへき地医療にも携わったことのある形成外科医。自身の幅広い経験から考える、医師のキャリア形成において大切なこととは——。
刈谷豊田総合病院で初期研修を終えた後、名大病院形成外科に入局。卒後5年目には沖縄県に赴任し、形成外科とともに地域医療に携わった経験も持つ。