スペシャリストの継続的育成による
サステナブルな臨床教育・研究力の強化事業
本事業のミッション
臨床の研究者を、
増やし、伸ばす、
サイクルをつくる。
日本の臨床研究者が、質の高い研究をするには何が必要なのか。
熱意ある研究者に、その環境と時間をつくること。
研究者に伴走し、ノウハウを共有できる仕組みをつくること。
それは医師のためでもあり、新しい医療を待つ人のためでもある。
本事業について
スペシャリストの
継続的育成による、
サステナブルな
臨床教育・研究力を
強化する。
「質の高い臨床教育」を持続的に確保するためには、医学生が診療技能の向上を図ったのちに現場で臨床実習を行い、その経験を可視化した上で、各診療科がさらに医学生にとって必要な医行為を現場で教えていく、循環型の教育スタイルが必要と考えます。
本事業では①医学生のシミュレーション教育の充実化、②医学生の経験の可視化し、③各診療科の文脈に寄り添った支援対話型のFD(Workplace based FD)の場で、その情報を基に、各診療科で行える医行為の提案をしていきます。またシミュレーションスペシャリストを育成してシミュレーション教育の運営や教育を担っていくことで、医師の教育への負担軽減に努めていきます。
「質の高い臨床研究」を持続的に確保するためには、研究者が自ら研究リテラシーを向上させ、研究成果を達成するのみならず、他の研究者の教育にも還元する、循環型支援・教育が必要です。そこで本事業においては、①各研究者が立案した臨床研究への伴走型支援の充実、②臨床研究教育コンテンツの作成と提供、③臨床研究に関わる医師が一定期間臨床研究支援をOn the Job Trainingで学び、そのノウハウを各診療科へ還元することで、循環・成長する臨床研究支援体制を構築することにより、質の高い臨床研究の確保を確立することを目指しています。
目的
臨床研究に関する
Hubをつくり、
教育レベルの標準化と
ノウハウの共有を目指す。
本プロジェクトでは臨床研者の教育・医学生の臨床実習での教育において持続的に質の向上を図るとともに、そのノウハウについて国内外で共有できるような体制を目指しています。
本プロジェクトのポイントは「OJTによる循環型臨床研究支援体制の構築とリテラシーの向上」にあります。自分の臨床研究スキルを向上させ、そのスキルを診療科へ持ち帰って臨床研究の指導的立場になることにより、診療科全体の臨床研究リテラシー向上に貢献すること。さらには、この循環を活発にすることにより大学全体の臨床研究レベルの向上を図ります。
臨床研究に関わる医師等の研究者は、多くの場合、自分が所属する診療科等の先輩臨床研究者をロールモデルにせざるを得ないのが現状です。そこで本プロジェクトによって、臨床研究教育学講座が臨床研究に関するHubとなり、臨床研究に関する教育レベルが標準化され、さらには各診療科が持つ臨床研究ノウハウが多くの研究者に共有され、臨床研究全体のレベルが向上することを目指しています。
臨床実習では「シミュレーション教育の充実による持続的な診療参加型臨床実習の実施」がポイントになります。医学生にとって経験が足りていない医行為を明らかにし、シミュレーション教育での技術力の向上を図るとともに、各診療科の実習でそれを経験させていくことで、安全かつ確実な診療参加型臨床実習の実質化を目指します。
シミュレーショントレーニングの環境を整え、安全に学べる環境を提供していきますが、それだけでは診療参加型臨床実習とはなりません。現場で教える医療者が、学生が十分にシミュレーションしていることを知り、実際に参加させてこそ診療参加といえます。そのために経験の可視化と、情報の共有とプログラムの提案を行っていきます。
教育システム
「医学部生教育」と
「臨床研究者教育」を
ネットワーク化することで
相乗効果を生み出す。
本プロジェクトは「シミュレーション教育の充実による持続的な診療参加型臨床実習強化プログラム」と「持続的に循環・成長する臨床研究支援体制の構築プログラム」を、独立したものではなく、診療科を支えるネットワークとする仕組みを構築。医師の働き方改革を実現しながら医学部生の教育を充実させるための熟練看護師等の活躍創出と、若手臨床研究者に対する多様な指導カリキュラムの構築によって、診療科・医師・研究者を支えるネットワークとなっています。
メンバー
氏名 | 所属 大学、自治体、研究所等 ・職名 | 事業における役割 |
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木村 宏 | 研究科長 | 統括 |
小寺 泰弘 | 附属病院病院長 | 臨床研究支援統括 |
錦織 宏 | 総合医学教育学・教授 | 質の高い臨床教育の確保プログラム責任者 |
勝野 雅央 | 神経内科学・教授 臨床研究教育学・教授(兼任) | 質の高い臨床研究の確保プログラム責任者 |
八谷 寛 | 公衆衛生学分野教授 | 学部教育統括 |
藤井 晃子 | 看護部長 | 看護師キャリア支援 |
橋詰 淳 | 臨床研究教育学・講師 | 臨床研究支援、倫理審査委員会対応、教育コンテンツ開発 |
岡崎 雅樹 | 臨床研究教育学・助教 | 臨床研究支援、倫理審査委員会対応、教育コンテンツ開発 |
高見 秀樹 | 卒後臨床研修キャリア形成支援センター・病院講師 | シミュレーションスペシャリスト養成責任者、医師の働き方改革対応責任者 |
尾上 剛史 | 卒後臨床研修・キャリア形成支援センター 病院講師 | 教学IR 実務、WBFD タスクフォース |
村松 友佳子 | 卒後臨床研修・キャリア形成支援センター 病院講師 | カリキュラム改革担当、WBFD タスクフォース |
近藤 猛 | 卒後臨床研修・キャリア形成支援センター 病院助教 | WBFDチーフタスクフォース、ICT 教育 |
木村 武司 | 卒後臨床研修・キャリア形成支援センター 病院助教 | 臨床実習担当、WBFD タスクフォース |
藤原 道隆 | メディカルxR センター センター長病院教授 | シミュレーションスペシャリスト養成、シミュレータ管理責任者 |
桜井 麻奈美 | メディカルxR センター 技術員 | シミュレーションスペシャリスト養成 |
今枝 明光 | 医学教育連携推進室 | 診療参加型臨床実習・OSCE |
氏名 | 所属・職名 | |
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高田 善久 | 消化器内科 医師 | |
美木 桃子 | 医学教育連携推進室・看護師 | |
宮村 啓子 | 医学教育連携推進室・看護師 |
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医学部生教育の充実と、
医師の働き方改革を両立医師は診療・研究・教育に関わっているのですが、昨今、それぞれに求められるレベルが高くなってきています。教育について取り上げると、医学生は、5〜6年生の臨床実習において、シミュレーションで学習したり、指導医と共に診療チームの一員として医療行為を実践したりすることが求められるようになってきています。一方で、診療や研究にも多忙な医師にこのような教育を全て担ってもらうことは非現実的です。本プロジェクトで、看護師などがシミュレーションスペシャリストとなって医学生の教育に関わるモデルを展開することで、学生教育の充実、看護師等の活躍の場の広がり確保、医師の診療や研究の時間の確保などにつながれば、と考えています。
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診療科全体、病院全体の、
臨床研究の質の向上へ診療科に所属する臨床研究者は、研究者としてのロールモデルを、所属診療科の先輩医師に依存しがちです。それでは先輩医師の負担も大きく、また、診療科ごとの臨床研究のノウハウにも大きな差が生じます。そこで本プロジェクトを通して、診療科から一旦離れて当研究室に所属しながら臨床研究についての知識や技術を教育することを可能にしました。自身の研究を進めながら、研究の手法などノウハウを獲得し、それを診療科に持ち帰って臨床研究指導者となることで、その診療科全体の臨床研究の質向上を目指します。また、臨床研究教育学教室が各診療科のノウハウを集め、それを全体に共有することで、各研究者、診療科全体、病院全体の臨床研究の質を高めることも目指しています。
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伴走型支援を強化していくことで、
研究の質を高める臨床研究教育学教室では、各診療科に所属している臨床研究者の研究計画作成から支援しています。初めて臨床研究を行いたい、という方には、臨床研究立案の支援をはじめ、必要に応じて、品質確認・進捗確認から論文化のフォローまで伴走型支援をしてきました。本プロジェクトでは、これらをさらに強化し、臨床研究者を志す各診療科の若手研究者を臨床研究スペシャリストとして採用し、OJT指導を行います。さらには、倫理審査委員会の出席、臨床研究教育コンテンツの開発などにも取り組み、継続的かつ広範囲にわたる臨床研究支援ネットワークの構築を目指しています。
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臨床医や研究者が、臨床研究を通じて
医療の改善に貢献する医療の質の向上や患者さんへのより良いケアなど、未来の医療をより良いものにするためには、日常診療の積み重ねと同時に、医学研究の推進の両輪が必要です。具体的な例として、たとえば医療のデジタル化によって蓄積された電子カルテの診療データは、同時に医療の改善のための重要な分析研究の対象にもなりえます。大規模な診療データを用いた分析研究は、その活動自体が臨床研究の質の向上に貢献しますし、結果的に患者さんへのケアの改善にもつながることが期待されます。また、臨床研究の知識と技術の向上は、新しい医療技術や治療法の開発にも寄与し、社会全体の医療水準の向上を目指す一翼を担っています。
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学生の臨床実習の質が、
医療の質につながる学生が診療チームに参加し、その一員として診療業務を分担しながら、医師としての職業的な知識・倫理観(プロフェッショナリズム)・思考法・技能・態度の基本的な内容を学ぶ「診療参加型臨床実習」が進んでいます。これにより医師として必要な能力の獲得ができれば、初期研修医になった際にある程度できる状態でスタートできますので、本人の成長だけでなく、医療現場にもプラスです。学生の実習をいかにスムーズに進めるかを考えていた先にたどり着いたのが本プロジェクトです。一つのポイントがシミュレーション教育の強化。もう一つが、各診療科への実施可能な医行為の提案です。また、将来的には看護師や臨床検査技師など幅広い医療従事者が相互に専門教育が受けられる効率的で安全な教育ネットワークを構築していきたいと考えています。
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研究手法を実践的に学びながら、
自身の研究へ活かす私は消化器内科に所属し、日常業務の傍ら臨床研究を行ってきました。将来的にさらにステップアップした研究をしたいという思いがあり、所属科からの推薦を頂いて本プロジェクトのメンバーに加わりました。現在は、所属科で臨床研究の窓口となり、様々な相談を頂きながら研究計画書の作成方法や、事例のリサーチ方法、多様な研究手法などを実践的に学び、自身の研究へも応用しています。このような経験はとても貴重であり、自身のみならず、診療科全体の研究スキルの向上につながると感じています。
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看護師が行ってきたシミュレーション教育を
医学部生に応用する私たち看護師は、これまでシミュレーション教育について教える側も教えられる側も経験することができました。臨床において看護師の方が実践するケースが多い手技もあり、そういった手技については看護師の方がより細かな手順について実践的に伝えることができると思います。また、臨床で遭遇する患者さんの状態や状況を例に取り上げての教育もできるため、教育の質という意味でもプラスに働くと考えています。こうして、医学部生のシミュレーション教育が進むと、自信をもって実践できる医行為が増えるため、臨床実習がより参加型となることが期待できます。また、学生の卒後の臨床への不安が軽減するだけでなく、臨床医として早く活躍できるので医師の業務負担の軽減にもつながると感じます。さらに、医療の質や安全の向上につながると考えます。
看護師が医学部生を
教育するという取り組み私たち自身、教えるということに苦手意識を持っていましたが、教育に関わることでやりがいを感じていますし、シミュレーション教育をより良くしていきたいという思いも生まれました。今後はシミュレーション教育だけではなく、シミュレーションスペシャリストとしてシミュレータの管理についても学んでいきたいです。
また、医学教育に看護師が参画するという教育モデルは、他の医療職の専門養育にとってのモデルとなり得ることから、このような取り組みがひろがれば多職種連携にもつながると思います。