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代表インタビュー 化学療法部

腫瘍を通して患者さんを診る。死の間際まで、最善を尽くす。柴田剛志先生

柴田剛志先生

研修で認知症の患者さんとふれあい
高齢者医療の魅力に気づいた。

私の祖父は開業医をしていました。幼い頃から、実家の隣にある医院をのぞいては、診療する姿を見てきました。丁寧に一人ひとりの患者さんと向き合う。いつしかその姿に自分を重ね、医師を目指すようになりましたね。
老年医学の分野に興味を持ったのは、研修医の頃です。当初は、内科もしくは心を扱う精神科の分野に進もうと考えていました。ある時、研修の中で高齢者の方と接する機会があり、「せん妄」の症状を目の当たりにしました。人間の認知の過程はこんなにも複雑で、不思議な現象が起こるものなのか—— その気づきが、老年医学を学ぶ大きなきっかけとなりました。地域医療に取り組みたい、とか、総合診療を学びながら、とか、老年医学に出会うまでのプロセスは人それぞれ。私の場合は、心や認知という切り口からこの分野の面白さに気づいたんだと思います。今考えれば、それは偶然なことであり、人と本当の意味で向き合える医療に出会えてよかったと思っています。

エビデンスがないから、とにかく経験を積んだ。

この分野に進んで気づいたのは、エビデンスが少ないということ。しかしこれは、決していいかげんな医療を行っているということではありません。現在、基礎医学研究、臨床医学研究において蓄積されているエビデンスのほとんどは、高齢者ではなく、働き盛りの人たちを対象として抽出されたデータ。高齢者医療や予防医学はそれだけ新しい分野なのです。私たちには、頼るべき辞書や教科書が無かった。そうはいっても、増えていく高齢者への対応力を上げていかなければならない。とにかく地域に出て、多くの高齢者を診療して経験値を増やし、対応の方法を模索していきました。経験を積む中で、患者さんと向き合うだけでは十分な医療が提供できないことも実感しました。患者さんをとりまくご家族と向き合って退院後の生活支援方法を検討する、看護や介護のスタッフとも情報交換を密に行って連携する。医師が見ていない、患者さんのありのままの姿を知っている人材とコミュニケーションをとることが、何より大切なのです。このような場では医師の専門知識を機関銃のように話しても、うまくコミュニケーションをとることができません。分かりやすい言葉づかいを心がけ、バランス感覚をもって多くの人と接する。このような「包容力」は、すぐには身につきません。だから、若い先生方に指導するときには、診療のアドバイスを行うだけでなく、会話やコミュニケーションを意識することを大切にしてほしいと伝えています。

柴田剛志先生

“ 老年内科マインド”が、医療界の慣習を大きく変える日は近い

私が医師としてこれまで歩んできた道は、精神医学への興味から始まり、臨床研究のためにイギリスに留学するなど、はじめから地域の高齢者と直接ふれあうような医療をしてきたわけではありません。でも、今改めて、患者さんもご家族もどうしたら幸せにできるかを考えるこの分野は、人間臭く、魅力的だと思っています。
これからは、疾患が発症してからの対応ではなく、予防医学的なアプローチで健康寿命を延ばしていく時代だと思います。治療に対する考え方も変わってくるでしょう。苦痛だけ与えていい結果が得られる可能性が低いなら、治療しないという選択肢も含めて患者さんに提示する。すべての診療科が、高齢社会への対応力を上げていくことが必要です。 現在の在宅医療では、24時間365日対応するシステムや、専門性の高い在宅医療が十分に提供できているとは言えません。だからこそ、老年内科の医師として、そうしたシステムづくりをリードしていきたい。病院、施設、地域に広く目を向け、在宅医をいかにして育成していくか、真剣に考えて一刻も早く具現化していきたいと思います。

プロフィール

1990年、浜松医科大学卒。名大入局後、関連病院で研修を終え、名古屋大学大学院医学系研究科にて老年科学を学ぶ。現在、老年内科医として外来診療を行うとともに、在宅管理医療部地域医療センターを兼務し、地域包括ケアの取り組みを推進する。また、医局長として医局員の教育とキャリアパス構築に従事する。

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